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行きと帰りは同じ道ではない:Wikipediaの一方通行リンク

シカゴのマディソン・ストリートにある信号機の柱に取り付けられた、左向き矢印の白黒の「ONE WAY」標識。背景にはオフィスビル
シカゴ、マディソン・ストリート。Wikipediaのリンクはすべてこの標識と同じで、たどることはできても逆走はできない。画像:John M Wolfson、Wikimedia Commons経由、CC0。

スペイン語版Wikipediaで、WikiRacingのプレイヤーは Antigua Roma(古代ローマ)から Vegetta777(スペインで最も有名なYouTuberの一人)へのレースを、7日に分けて10回走っている。中央値は23.5クリック、時間にして9分近く。10回のうち最速でも8クリックかかった。

では逆から見てみる。スペインの大物YouTuberを6人選び(Vegetta777、El Rubius、Willyrex、AuronPlay、TheGrefg、Ibai Llanos)、彼らが登場する完走レースをすべて抜き出した。YouTuberがスタートだった119件では、中央値は5クリック、約2分。YouTuberがゴールだった126件では、14クリック、7分以上になった。

同じ6つの記事、同じ百科事典なのに、どちらの端にいるかだけでクリック数がほぼ3倍になる。最初は集計ミスを疑って、経路を1本ずつ見直した。ミスではなかった。リンクとはそういうものなのだ。一度これが見えると、「なぜこのレースはこんなに苦しいのか」という場面の多くに説明がつく。

リンクは一方通行の道

ある記事が別の記事にリンクしても、両者のあいだに道路ができるわけではない。できるのは一方通行の道だ。スペイン語版の「Vegetta777」は「España」と「YouTube」にリンクしている。しかしそのどちらからもVegetta777へのリンクはない。そうする理由もない。スペインの記事が扱うのは歴史や地理、政治であって、何百万人ものスペイン人の中から一人のYouTuberを取り上げる必然性はないからだ。

数学ではこういうネットワークを有向グラフと呼ぶ。つながりの一本一本に矢印がついている。レースでは矢印の向きにしか進めない。だからAからBへの距離とBからAへの距離は別々の数字で、似ている保証はどこにもない。

入口を数える

これらの記事を内側から見るとこうなる。スペイン語版でWikipedia自身のAPIを使い、記事だけを数えた。

Vegetta777から出るのは簡単だ。68ある出口のうち2つがEspañaとYouTubeで、どちらからでも百科事典の大部分は数クリック先にある。難しいのはVegetta777にたどり着くほうだ。スペイン語版全体で、この記事を指しているのは8本だけ。日付(12 de abril)、年代(Años 2010)、名前の似た2ページ(Vegeta、Vegueta)、シリーズ作品のKarmaland、スペイン語圏のYouTube Rewindのページ、そして仲間のYouTuberであるEl RubiusとWillyrex。

入口はこれで全部だ。このどれかの前に立っていなければ、中には入れない。

これは誰でも確かめられる。Wikipediaの各記事にはツールメニューに「リンク元」のページがある。Vegetta777のそれはごく短いこのリストだ。国の記事で同じことをすると、延々とスクロールすることになる。

10本のレースで実際に起きたこと

Antigua RomaからVegetta777への10件は、どれもたった3つの入口のどれかから入っている。El Rubius(5回)、Willyrex(4回)、Rewind hispano(1回)。4つ目を見つけた人はいない。難しかったのは、その界隈にたどり着くことそのものだった。10件のうち最速の8クリックを、画面に出た記事名そのままで載せておく。

Antigua Roma → Mar Mediterráneo → España → OTAN → Estados Unidos → YouTube → Twitch → El Rubius → Vegetta777

ローマからYouTubeまでの登りに5クリック。地中海、スペイン、NATO、アメリカを経由している。そのあとTwitch、El Rubiusで終わり。遅いレースが時間を失ったのは終盤ではなく中盤だった。17クリックかかった2件のうち1件は、コミュニケーション理論のあたりを10クリックほどさまよっている(Comunicación、Canal de comunicaciónを3回連続、Relación social、Trabajo)。そこからTeléfonoにたどり着き、ようやくYouTubeに出た。

小さな記事へ向かうレースは、本当はこういう形をしている。その記事の世界全体を見下ろす大きなページまで登り、そこから少しずつ狭いページへ降りて、数少ない入口のどれかに行き当たる。登りは速い。時間を食うのは、正しい降り道を探すほうだ。

フランスのロワール川流域を黄色で示した地図。ロワール川とアリエ川、シェール川、ヴィエンヌ川、サルト川などの支流が青で描かれている
ロワール川の流域。下流へ向かえば、どの小川も自然に海へ着く。海から特定の小川へ戻るには、合流点ごとに正しい分かれ道を選ばなければならない。画像:Kmusser、Wikimedia Commons経由、CC BY-SA 3.0。

差が消えるとき

「逆向きは必ず難しい」という法則ではない。どちらに入口が多いかによって、差は縮まるし、ひっくり返ることもある。

フランス語版の「France」と「Paris」は、どちら向きでも1クリック。109件のレースで変わらない。互いに直接リンクし合う巨大なハブ同士なので、偏りようがない。

ドイツ語版には、ちょうど中間の例がある。Schokolade(チョコレート)からNapoleon Bonaparte(ナポレオン)へは、記録された4件で中央値3.5クリック。ナポレオンからチョコレートへは30件で5.5クリック。どちらの記事も相手にはリンクしていない。ただ、ナポレオンを指すページはおよそ14,700、チョコレートはおよそ1,000。ナポレオンに着くほうが楽な半分なのだ。チョコレートから出た4件のうち3件はFrankreich(フランス)を経由して、そのまま入っている。逆向きだと、チョコレートへの入口を探す必要がある。カカオ、菓子職人、植民地時代の交易路。

だから役に立つ法則は「逆は難しい」ではない。難しさを決めるのはスタートよりもゴールのほうだ。スタートの記事にはまともな出口がひとつあれば足りる。ゴールは、その入口のどれかを見つけることを要求する。そして小さな記事には入口がほとんどない。

レースでどう使うか

最初のクリックの前にゴールを見積もる。何ページくらいがその記事に触れていそうか考える。国、戦争、有名な科学者なら数千。YouTuber、村、アルバム1枚なら数えるほどで、しかもかなり具体的なページになる(共演者、その地域、バンド)。本当の目的地はそちらで、ゴール自体は最後の一段にすぎない。

いちばん大きな世界ではなく、正しい世界へ登る。上の遅いレースは、ゴールがネット文化の住人なのに、コミュニケーションや技術のページでクリックを使い果たした。最速のレースは国、アメリカ、YouTubeと一直線だった。攻略ガイドの「ハブを経由する」という助言は今も有効だ。ただ、目に入る最大のハブではなく、ゴールの真上にあるハブを選ぶこと。

仲間づたいに降りる。YouTubeからいちばん速かった降り方は、YouTuberからYouTuberへだった。Wikipediaでは、人は同業者からリンクされる。音楽家ならバンドメンバーから、村なら所属する自治体から、研究者なら教え子や指導教員から。その仲間の集まりを見つければ、入口が見つかる。

これで、以前書いた2本の記事にもつながる。実際の20万5000クリックの集計で最も通過された記事が国だったのは、国の記事には膨大な出口があり、誰もが登る途中でそこを通るからだ。そしてスモールワールドの話に欠けていた脚注でもある。ネットワークは平均すれば小さい。ただし矢印の向きに歩いている限りは。

正直に答えておきたい質問

スタートとゴールを比べるのは大ざっぱでは?反対側の記事は同じではないのに。そのとおりで、これは実験室の実験ではない。YouTuberから出発した119件はあらゆるゴールへ向かい、YouTuberに着いた126件はあらゆる記事から来ている。ただ、どちらのサンプルも大きく、それぞれ40日以上に散らばっている。そして個別のペアも同じ方向を指している。El RubiusからMichael Jacksonは5件で中央値4クリック、Antigua RomaからVegetta777は10件で23.5クリック。Vegetta777からAntigua Romaへのレースはまだ誰も走っていない。短く終わると私は踏んでいる。

なぜWikipediaは双方向にリンクしないのか。リンクは編集上の判断だからだ。「España」はスペインについての記事であって、有名なスペイン人を、YouTuberも含めて全員リンクしたら読めたものではない。Wikipediaのリンクに関するガイドラインも、リンクを貼りすぎず、その記事の読者の役に立つものだけを残すよう求めている。リンクが偏っているのは、仕組みが意図どおりに動いている証拠だ。

それで不公平なペアが生まれるのでは。私はそうは思わない。別の種類のパズルになるだけだ。速くクリックするより、Wikipediaの組み立てを知っているほうが効くパズル。体感したいなら、よく知っている小さな記事をゴールにして手動レースを組み、終わったらスタートとゴールを入れ替えてもう一度やってみてほしい。

Chris

WikiRacingの個人開発者。 概要